名古屋高等裁判所 昭和30年(う)1157号・昭30年(う)1156号・昭30年(う)1158号・昭30年(う)1159号 判決
原判決は被告人古屋敏夫が判示第三の如く原審相被告人松本正光より買受けた判示外国製腕巻時計百ケは被告人において全部他に転売した為関税法第百十八条第一項により之を没収することができないので同条第二項により犯行当時の価格に相当する四十一万四千七百円を追徴する旨判示し、原判示松本関係第二事実と併せて之が証拠として他の証拠とともに名古屋税関鑑査部長作成の昭和三十年二月一日附犯則物件鑑定書を引用し綜合認定している。そして前示犯則物件鑑定書は右松本の関係においては適法に証拠調がされているが被告人に対する関係においては証拠調がされていないことは原審公判調書により明らかである。即ち昭和三十年二月十五日附公判調書によれば原審相被告人松本の原判示第二の事実立証のため右犯則物件鑑定書(証拠標目書(二)の番号6)の証拠調をしたことは明らかであるが、記録を調査するも古屋被告人の為之が証拠調をした形跡を認めることができないから同被告関係前記第三事実の認定の証拠に引用することは明かに不適法である。然し該事実は右不適法の証拠を除いても十分に之を認定し得るし、又関税法第百十八条第一項により犯罪貨物が没収不能の場合に追徴すべき価格の算定は所謂罪となるべき事実に該当しないから厳格な証明を要しないものと解するを相当とするところ、本件没収不能の犯罪貨物は松本が外一名と共謀の上原判示第二の如く関税を免れかつ無許可輸入をした外国製腕巻時計であり、被告人古屋は原判示第三の如くこの情を知りながら右時計を松本より買受けたものであつて、松本は被告人へ、被告人は他へ転売した為右両名より没収することができないので犯行当時のその価絡を追徴することになつたものであり、かつ右犯則物件鑑定書は前示の如く松本の為適法な証拠調を経、かつ記録に編綴されて居り、古屋被告人の為には特に証拠調がされなかつたけれども、前記の理由により之を証拠に採用することは違法でなく、所論の如く証拠に基かないで追徴額を認定したということはできないから、論旨は理由がない。
(裁判長判事 高城運七 判事 柳沢節夫 判事 中浜辰男)